夏休みに釣りたい ヘンな魚や甲殻類図鑑

釣りをしていると、たくさんの個性的な生き物に出会うことができます。
見るからにヘン……。
一見普通な見慣れた顔だけど、よく見たら……。
夏休みに会いに行きたい8種類の甲殻類や魚を紹介します。
愛すべきユニークポイントをご覧あれ。

  • ザ・ロングアームは泳ぎも達者

    テナガエビ

    • ヘンなポイント:長い腕
    • 分類:テナガエビ科テナガエビ属
    • 生息場所:河川(おもに汽水域)、湖沼
    • 大きさ:腕も含めて20cm以上になることも

    どんな生き物?

    「名は体を表わす」の代表例がこのエビです。ヘンなポイントは腕。個体によっては身体よりも長いこともあります。面白いのは、腕が極端に長いのはオスだけということです。オスだけツノが生えている鹿に通じるものがありますね。ちなみにテナガエビの場合はメスも普通のエビよりは腕が長いです。なぜこんなにアンバランスな身体になっているのか? 外敵を威嚇するため、捕食のため……さまざまな説があります。

    釣り方

    テナガエビは夜行性なので、昼間に釣る場合は物陰をねらうのが基本です。消波ブロックや杭など、影があるところを釣ってみましょう。アカムシやミミズをエサにしたウキ釣り仕掛けを使うのが一般的。驚くのは意外と引きが強烈なこと。ビン! ビン! ビン! と、泳いで抵抗するので、釣ったことがない人はビックリすると思います。エビも泳ぐ生き物であることを教えてくれます。

    テナガエビ

    これはメス。オスほどではないが、充分腕が長い

    河川下流域の護岸際などが代表的な釣り場です
  • 釣り方がヘン!? 箱メガネで覗いて釣ろう!

    カジカ

    • ヘンなポイント:箱メガネを使う釣り方
    • 分類:カサゴ目カジカ科
    • 生息場所:河川(北海道南部以南)
    • 大きさ:成魚は15~17cm

    どんな生き物?

    石がある川底に生息し、エビや水生昆虫、小魚を食べて暮らしています。頭でっかちでエラブタの縁にトゲがありちょっとだけ怪獣っぽいところがヘンなところです。一生淡水で過ごすタイプと、淡水でふ化したあとに海に下り、ふたたび川に戻るタイプの2種類がいると言われています。

    釣り方

    川に立ちこみ、箱メガネで川底を覗いて釣るというとっても夏休みっぽい釣りで楽しむことができます。魚そのものが見えなくても、いかにも隠れていそうな石の隙間などにエサを入れると飛び出してくることも。サオに10~15cmの短いイトを付け、ミミズや川虫をエサにして釣っていきます。

    • 小さいけれど怪獣っぽいルックスです
    • 箱メガネで覗くと……いた!
    • 目の前にエサを垂らしてみると……すべてが見える興奮の釣りです
    • 箱メガネと釣りザオ
  • 石を持ってるって、本当!?

    イシモチ

    • ヘンなポイント:頭の石
    • 分類:スズキ目スズキ亜目ニベ科
    • 生息場所:海(東北地方以南)
    • 大きさ:20~40cmが一般的

    どんな生き物?

    名前の由来は「石持ち」。頭のなかにある「耳石」(耳のような役割をします)がとても大きくこの名前になりました。水深20~100m前後の砂泥地に生息しています。群れで泳ぎまわり、イソメやエビなどを食べて生活しています。釣ったときに「グーグー」と音を出しますが、これは泣いているのではなく浮袋を振動させている音です。

    釣り方

    岸からの投げ釣りや、沖の胴付き仕掛けの釣りなどで比較的簡単に釣ることができます。エサはアオイソメが一般的。「アジ釣りはじめます!」の第2回では東京湾のアジ釣りのゲストとして登場。このときはエサはアオイソメで、底付近をねらっているときに食べてきました。

    イシモチ 頭の中に石があります。だからイシモチ!

    親子でイシモチをゲット!

    • エサはアオイソメがポピュラー
    • これが耳石。大きい!
  • 立ち泳ぎのサーベルフィッシュ

    タチウオ

    • ヘンなポイント:「太刀」と「立ち」
    • 分類:スズキ目サバ亜目タチウオ科
    • 生息場所:海(北海道以南の沿岸)
    • 大きさ:最大で1.5m

    どんな生き物?

    岸近くの水面近くから、沖の水深400mまで非常に幅広いゾーンに生息します。タチウオは漢字で書くと「太刀魚」。長い銀色のフォルムが太刀のように見えることから名づけられています。そして立ち泳ぎするのもヘンなポイント。頭を水面に向けて群れで行動することが知られています。「太刀」であり「立ち」な魚なのです。

    釣り方

    小魚が主食なので、岸から釣る場合はドジョウやキビナゴをエサにしたウキ釣りやルアーフィッシングが主流です。歯が極めて鋭いのも特徴で、通常のイトでねらうと一瞬で切られてしまうため、ハリに近い部分にはワイヤーが使われます。昼間は深場にいて、夜に接岸するため昼は沖釣り、夜は岸釣りがメインになります。夏休みに釣りやすいのは船からの沖釣りです。

    タチウオ 大型のタチウオは「ドラゴン」とも呼ばれます

    タチウオ

    見てください! この歯!

    タチウオ

    キビナゴをエサにしてねらいます。エサは生きていなくても大丈夫

    タチウオ

    美しい夜景を眺めながら釣ることも多いです
  • 海底を歩いてボーボーと鳴く!?

    ホウボウ

    • ヘンなポイント:歩くところと鳴くところ
    • 分類:カサゴ目ホウボウ科
    • 生息場所:海(北海道以南の沿岸)
    • 大きさ:最大で40cm前後

    どんな生き物?

    ヘンなところが多すぎる謎の魚です。頭でっかちで、胸ビレはまるでチョウチョが2羽止まっているかのような鮮やかさ。見た目だけではありません。泳ぐのではなく、海底をよちよちと歩くように移動するのが特徴です。さらに釣り上げるとオスは「ボーボー」と鳴くという……。ヘンのデパート。それがホウボウです。

    釣り方

    水深25~600mの砂泥底に生息するため船からの釣りがメイン。エビや小魚をエサにした釣りやタイラバでよく掛かります。マダイやシロギス釣りのときのゲストで釣れることが多く、美味しいことから大歓迎されています。

    タチウオ

    海底を歩き回ることで知られています

    タチウオ

    まるで熱帯のチョウチョが止まっているかのようなヒレ

    タチウオ

    ホウボウに会いやすいのは船からの釣りです
  • 命中上等!? いかついボディー!?

    マトウダイ

    • ヘンなポイント:的とヒレ
    • 分類:マトウダイ目マトウダイ科
    • 生息場所:海(北海道から九州までの沿岸)
    • 大きさ:最大で50cm前後

    どんな生き物?

    ホウボウが「美」のヘンならマトウダイは「剛」のヘン。強そうな楕円形でモヒカンのような背ビレがカッコいいですね。身体のど真ん中に的のような黒い円があるのも特徴で、名前の由来もこの「マト」です。水深30~400mの砂泥底の海底付近に生息します。

    釣り方

    大きな口で小魚を一気に飲み込むように捕食する魚で、ヒラメやマゴチ釣りのゲストとして釣れることがあります。マトウダイを釣りたいなら底付近を小魚(イワシなど)のエサでねらうのが一般的。ルアーフィッシングで掛かることも。

    マトウダイ

    海のツッパリ!

    マトウダイ

    大きな口でイワシを一気に飲み込んだ

    マトウダイ

    ねらって釣ることは少なく、ヒラメやマゴチに混じって釣れます
  • 海の軟体怪獣

    マダコ

    • ヘンなポイント:8本の腕と丸い頭とコロコロ変わる色と……というか全部!?
    • 分類:八腕目マダコ科
    • 生息場所:海(本州北部以南の琉球列島を除く全国沿岸)
    • 大きさ:最大で60cm前後

    どんな生き物?

    8本の腕をもつ軟体動物。とっても軟らかいふにょふにょボディーで、昼間は小さな隙間などに入り込んで息をひそめています(夜行性)。周りの色の合わせて体色を変える忍者でもあります。外敵に襲われるとスミを吐いて逃げることでも有名。

    釣り方

    カニなどの甲殻類が大好物。タコテンヤと呼ばれる専門の道具にカニをくくりつけたりしてねらいます。障害物の多い海底にテンヤを這わせると……どこからともなく現われていきなり重くなるアタリが出ます。夏が最盛期。

    • これは船から釣れたマダコ
    • カニを抱いてきた
    • カニを巻きつけたタコテンヤ
    • 茹でられて真っ赤になったタコ
  • 箱が泳ぐって!?

    ハコフグ

    • ヘンなポイント:箱のかたちをした身体
    • 分類:フグ目ハコイカ科
    • 生息場所:海(本州中部以南の沿岸)
    • 大きさ:20cm前後

    どんな生き物?

    フグの仲間で、鮮やかな網目模様と箱のような身体のかたちが興味深いです。海を覗いていると見かけることがあり、ヒレだけをピヨピヨ動かしてゆっくり進むようすはヒヨコチックでかわいらしさ満点。フグ毒のテトロドトキシンはありませんが、フグ類ということで調理は有資格者しか行なえません。

    釣り方

    ハコフグ自体をねらって釣りをすることは稀ですが、磯釣りやサナギエサのクロダイ釣りのゲストで時おり掛かってくれます。寄せエサに好反応。

    • ハコフグはさかなクンが溺愛する魚としても知られています。あの帽子はハコフグがモチーフなんです!
    • ハコフグの外殻を箱とし、ネギ味噌焼きを詰めた料理もあります(調理には資格が必要です)