釣りのトラブルシューティング&準備

トラブルシューティング

No. 02

【バックラッシュ編】

この連載は「釣りのトラブルシューティング」がテーマ。
今回は「バックラッシュ」について説明します。
リールを使う釣りであれば避けては通れない現象であるバックラッシュ。
どんなトラブルなのか、どうすれば解消できるのかなど、今回はルアー釣りを例にとって紹介しますね。
トラブルを減らして、快適に釣りを楽しめるようになりましょう!

バックラッシュとは?

釣りのなかでも、リールを使う釣りでは必ずや起こるバックラッシュ。
英単語としての「backlash」は、「反動、跳ね返り」などの意味を持ちますが、釣りの世界ではどのような現象を指すのでしょうか?

ずばり、これがバックラッシュです。
リールに巻いたイトがぐちゃぐちゃになってしまい、これでは仕掛けを投げることも、巻き取ることもできません……。
バックラッシュという言葉はアメリカの釣りでも同じ現象を指す言葉として使われますが、「bird’s nest」(鳥の巣)という表現もあるようです。たしかに、リールの上でぐちゃぐちゃになった釣りイトは、まさに鳥の巣のようですね。
それではなぜ、このような現象が起こってしまうのでしょうか?

リールの種類とバックラッシュの仕組み

釣りで使うリールには大きく分けて2種類のリールがあります。

こちらはベイトリールと呼ばれるリールです。サオを持ったときに、リールが上を向いています。

こちらはスピニングリールと呼ばれるリールです。サオを持ったときに、リールが下を向いています。
それぞれ、イトが巻いてある部分を「スプール」と呼びます。両者の大きな違いは、このスプールが回転するかしないか、にあります。
ベイトリールはスプールが回転することで、イトを出してルアーを投げること、また巻き取ることができます。対してスピニングリールはイトがスプールからほどけるようにして放出されます。

バックラッシュはベイトリールに起こりやすい現象で、スプールの回転速度がイトの出ていくスピードを上回ったときに起こります。家のトイレットペーパーを思いっきり引き出すと、出すぎたペーパーが芯にダブって巻き付いてしまうのを想像してください。原理はそれと同じです。

ルアーを投げた直後はいいのですが、着水に向かうにつれてルアーは必ず失速していくので、スプールが回転するという構造上、どうしても避けられないものなのです。

一方、頻度こそ少ないですがスピニングリールにもバックラッシュはあります。ベイトリールがサオ先に向かってイトが真っすぐ伸びているのに対し、スピニングリールはイトがらせん状に放出されていくので、だんだんとイトのヨレが蓄積されていき、絡みやすくなってしまうのです。

バックラッシュを減らすための準備

どんなに釣りが上手な人でも、バックラッシュしない日はありません。それでも、頻度を減らすために工夫することはできます。どんなことに気をつければよいでしょう?

先に説明したとおり、ベイトリールにバックラッシュは付きものなので、もともとバックラッシュしにくいように2種類のブレーキがついています。現行のリールはどれも高性能で、非常にバックラッシュしにくく作られていますが、まずはこれを適切に設定することがとても重要です。

メーカーによって仕様が異なる場合もありますが、仕組みはどれも同じです。まずは、スプールを押さえて回転にブレーキをかける「メカニカルブレーキ」を設定します。リールのハンドル側についています。

メカニカルブレーキを緩めると、指でスプールを左右に動かしたときに「カタカタ」と動きます。緩めると、ブレーキ力が弱まることになります。逆にきつく締めていくと、スプールが動きにくくなっていきます。ブレーキ力が強くなって、イトが出にくくなります。

きついところから徐々に緩めていき、わずかにカタカタというギリギリのところで固定します。これでメカニカルブレーキの設定はOKです。

次にダイヤルがついている反対側のブレーキを設定していきます。モデルによって書いてある数字が違いますが、仕組みは同じです。
数字の小さいほうに合わせると、ブレーキ力が弱くなります。バックラッシュしにくくするためには、まずはもっともブレーキが効く、数字のいちばん大きいほうに合わせます。これだけでかなりバックラッシュしにくくなります。

しかし、ブレーキ力が強いということは、ルアーを遠くまで飛ばせないということになります。近い距離をねらうのであればこれでOKですが、飛距離を出したいときはブレーキ力を弱める必要があります。

しかし……! ブレーキ力が弱ければ飛距離は出ますが、バックラッシュしやすくもなります。これは、使うルアーや風の強さなどにも関係してくるので、投げてみてちょうどいい設定を探っていくようにしましょう。ブレーキを強めからだんだん緩めていくと、どこかで快適なセッティングが見つかります。

使うルアーによる違いというのは、ずばり「空気抵抗」の違いです。写真のような細長い形状をしたミノーと呼ばれるルアーは空気抵抗を受けにくいので飛距離を出しやすく、バックラッシュしにくいと言えます。

ほんの一例ですが、このようにパーツがついたルアーは、空気抵抗を受けやすく、バックラッシュしやすいです。ブレーキ設定を強めにするとよいでしょう。

また、ルアーの形状だけでなく、サオとルアーのバランスもバックラッシュに関係してきます。
ルアーフィッシングではあらゆる重さのルアーを使うので、それによってサオの硬さも異なります。遠投性能や操作性など、さまざまな要素があるので一概には言えませんが、重いルアーを投げるサオは硬く、軽いルアーを投げるサオは軟らかい、という傾向があります。

ルアーフィッシングでは、サオの反発力を利用してルアーを飛ばすので、硬いサオで軽いルアーを投げようとすると、サオが曲がらないので遠くまで飛ばすことができません。すると、ルアーの飛んでいくスピードよりも、スプールの回転速度 が上回ってしまい、バックラッシュしやすくなります。
使うサオやリール、ルアーについては、ねらう魚や釣りをする場所などの条件によってベストなバランスがあるので、釣具店や上級者の方などからアドバイスをもらうようにしましょう。

キャストするときは背後を必ず確認しましょう。人がいないことはもちろん、うしろに木があったりするとそこに引っ掛けてバックラッシュしてしまうので要注意です。

投げたら必ず行なうのが「サミング」です。スプールが回りすぎないように指でブレーキをかけるためです。

親指の腹に軽くラインが当たるくらいの感じで添えます。着水と同時に少し力を入れて、イトが出ていくのを完全に止めます。これは、慣れるまで練習あるのみです!

これはサミングを行なわなかった場合です。イトがスプールから浮いてきているのがわかるでしょうか? 指で止めない限り、ルアーが着水してもスプールは回り続けるので、サミングを行なわないと必ずバックラッシュしてしまいます。

バックラッシュの直し方

それでは、実際にバックラッシュしてしまったらどうやって直すのか説明していきます。

まずは、親指でスプールを軽く押さえながらゆっくりイトを引き出していきます。スプールを押さえないとイトが出すぎてしまい、バックラッシュが悪化してしまうので注意です。

ゆっくりイトを引き出していくと、どこかでイトが出ていくのが止まります。ここで無理に引っ張らずに、止まったままにします。

スプールをよく見ると、イトがつっかえている部分があります。ここを優しくつまみあげてやります。力を入れて引っ張るとコブになってしまうことがあるので、軽くほぐしてやる感じです。
すると、またイトを引き出すことができるようになります。これを繰り返してまずはスプールの絡みをなくしていきます。

絡みがなくなったら、イトを指で押さえてながら軽く張った状態にしてゆっくり巻き取っていきます。足もとには長いイトが出ているので、指で優しく包み込むようにイトを持ちながら、ゆっくりリールを巻きましょう。

巻き取っていくとき、イトが絡まっていることがあるので、巻き込んでしまう前に指で優しくほどきましょう。ほとんど簡単にほどけることが多いです。気づかずに強引にやるとまた絡まってしまうので、ゆっくり巻き取ることを心がけましょう。

直すときの注意です。絡まったイトを出していくと、当然足もとにイトがどんどん溜まっていきます。二次災害を起こさないために、足もとが平らで、なにもないところでやりましょう。

また、溜まったイトには手を触れないようにしましょう。触るとまたそこで絡まってしまうことがあります。

小さなコブも、ほどけないことはないのですが、イトが弱ってしまっていることが多いので、コブの手前20cmくらいで切ったほうがよいです。

どうしても直らない場合は、絡まった部分の手前でイトを切ってしまいましょう。小さなコブでも、放っておくと大きな魚が掛かったときに切れてしまいます。また、何度もバックラッシュしているとイトがかなり傷んでいるので、直ったとしても使わないほうがいいです。

途中で切るとイトが減っていってしまうので、必ず替えを持っていくようにしましょう。また当たり前ですが、切ったイトなどのゴミは釣り場に残さないようにしましょう。

そして、なによりも大事なことは「落ち着くこと」です!
バックラッシュは落ち着いて対処すればほとんどの場合綺麗に修復できます。
「せっかく釣りに来たのになにをしているんだろう……」と気持ちも落ち込んでしまいがちですが、いったん冷静になる時間を与えられたと思って、落ち着いて対応しましょう。 動画でも詳しく解説していますので、ぜひご覧ください。