釣りのトラブルシューティング&準備

トラブルシューティング

No. 03

【釣りバリ編】

この連載は「釣りのトラブルシューティング」がテーマ。
今回は「釣りバリ」について説明します。
ハリは、自分だけでなく、周りの人にとっても危険なものです。
釣りの最中だけでなく、収納時や持ち運び時の正しい扱い方を知り、安全に釣りが楽しめるようにしましょう!

ハリにまつわるトラブル

ハリにまつわるトラブルは、「刺さってはいけないなにかに刺さってしまう」という1点に尽きます。
トラブルを回避するため、また対処法を学ぶために、まずはハリの基本的な構造を知っておきましょう。

ハリの各部分にはそれぞれ名前がついています。
魚の口を貫通させるための道具ですから、先端は非常に鋭利にできています。
また多くのハリには、掛かってから抜けにくくするために、「カエシ(バーブ)」という突起があります。

しかし、魚にも刺さりやすいということは、身の回りのあらゆるものにも刺さりやすいということです。
そして、カエシがあるがゆえに、抜けにくいという点も同じですね。
ハリに関連したトラブルは、このカエシに起因するものが多いです。
トラブルを避けるために、「刺さりやすく、抜けにくい」ということを念頭に置くことが重要と言えるでしょう

釣りバリの種類

考古学の研究によると、釣りバリは旧石器時代からあったとされています。
太古の昔から、基本的な形状は変わっていなかったようで、木や動物の骨、シカなどの角が用いられていたようです。
今日ではステンレス線などの金属を加工して作られることが多いです。
ハリにもさまざまな種類がありますが、おもに対象となる魚によって形状が異なります。
どんな種類があるのか、代表的なものを見ていきましょう

●袖バリ
海水、淡水の両方で、さまざまな魚に使える万能のハリ。サイズは極小のものから大きなものまであります。淡水では30cmクラスのフナからワカサギなど、海ではアジやサヨリ釣りなどに使われます

●チヌバリ
クロダイのウキ釣り仕掛けに使うハリです。軸が短くてフトコロが広く、ハリ全体が丸っぽいのが特徴です。先端が少し内側に曲がっているので、魚が掛かったあと外れにくいです

●流線
軸が長く、全体的に細長いです。シロギス釣りによく使われます。ミミズのような形をした、シロギス釣りの代表的なエサである、アオイソメがズレにくいというメリットがあります

●ルアー用トレブルフック
3本のハリが一体になったものをトレブルフックと呼びます。おもにルアーに装着するハリです。魚がルアーに対してアタックしてきたときに、口の周りに刺さる確率を高めています

●ソフトルアー用の管付きシングルフック
おもに、ワームと呼ばれるソフトプラスチック製のルアーを装着するときに使われます。イトを結ぶ部分が輪っかになっていて、イトを結びやすくなっています

これらのハリに、それぞれサイズが存在します。「〇〇号」、「#〇」などの規格になっており、ねらう魚の大きさや状況によって使い分けます

ハリの保管方法

トラブルを事前に防ぐために、まずはハリをどう保管するべきかについて紹介します。
共通して言えるのは、「ほかの道具と混ざらないように保管する」ということです。
ハリはその形状から、ほかのものと絡みやすく、また大きさや種類が判別しづらいからです。

手っ取り早いのは、購入した袋のまま保管する方法です。ハリの種類やサイズも一目瞭然なので、使いたいハリがわかりやすいのもメリットです

ハリ用のケースを用意して、パッケージから出してサイズ、種類ごとに分けて保管するのもよいでしょう。ハリは消耗品なので、よく使う種類やサイズが絞れている人にはおすすめです

トレブルフックのルアー限定ですが、フックカバーを使うのは非常に有効な方法です。先端が隠れ、なおかつハリ同士が絡まなくなります。これならどこにも刺さらないですね

ペンチを使ってカエシを潰して保管するのもアリです。とくにビギナーや子どもなど、まだハリの扱いに慣れていない場合は、少しでも危険を回避するため、事前措置として有効です

釣り場でのトラブル回避のために

それでは、実際に釣り場でトラブルを回避するためにどんなことに気をつければよいか紹介していきます。

仕掛けを投げるときの後方確認をしっかり行ないましょう。後ろに人がいないことはもちろんですが、障害物がないかなど、サオを振って投げることのできるスペースがちゃんとあるか、必ず確認しましょう

自分の投げた仕掛けに対しての防御という意味もありますが、ほかの人が投げた仕掛けが当たってしまうことも考えられます。頭を守るためにも、帽子、そして偏光サングラスは必ず着用しておきましょう。
余談ですが、漫画『釣りキチ三平』の人気キャラクター「魚紳さん」は、幼いころに父親の投げた仕掛けが目に引っ掛かって、片目を失ったというエピソードがあります

移動時など、釣りをしていない時間でのトラブルが意外と多いです。とくに、仕掛けをサオから垂らしたままにしていると、自分の衣服など思わぬところに引っ掛かったりしてしまいます。なので、ガイドやリールに引っ掛けるとよいでしょう。
また、サオによってはハリを引っ掛けるためのフックキーパーがついていますので、そこに引っ掛けておくのも◎。フックキーパーは後づけで購入できるものもあります

手で持つ場合も、ハリそのものを持たないようにしましょう。ルアーの場合はルアー本体を持つのもいいですし、ハリス(チモトのすぐ上のイト)を持つのも比較的安全です

これはサビキ仕掛け(写真は「アジ釣りはじめよう」のひとコマです)。ハリがたくさん付いた仕掛けで魚を釣ったときはできるだけハリの近くを持たないようにしましょう。写真のようにハリのないオモリの近くを持つと魚が暴れたりしてハリが刺さる可能性を減らせます。

釣れた魚からハリを外すときは、必ずペンチやプライヤーを使ってハリを外しましょう。魚が暴れてハリが自分の手に刺さる可能性があるので、素手で外そうとすると危険です

写真はフォーセップと呼ばれるもので、先端が細く、口の小さい魚に適したものです。自分の釣りたい魚の口のサイズに合わせて選ぶようにしましょう

こうした道具を使うと、簡単に口から外すことができます。ハリの軸部分を持って、刺さっている向きと逆方向に引っ張りましょう

根掛かりを外すときも注意です。手の届く範囲であれば、こちらも必ずペンチなどを使って外します

手の届かないところに引っ掛かってしまった場合は、根掛かり回収棒という円筒状のものや、ヒモ付きの回収ツールがあると便利です

道具を使ってもどうしても外れないときは、イトを引っ張るしかありません。ハリが伸びて無事仕掛けが外れるか、イトが切れるかのどちらかになります。
このとき、外れた仕掛けが自分の方向に飛んでこないように、角度をつけて引っ張ることが大事です。もちろん、その延長線上に人がいないことを必ず確認しましょう

どんな釣りでも、ハリは現場で頻繁に交換することになります。なので、曲がってしまったり、先端が甘くなってきたものはひとつのケースにまとめて保管するとよいでしょう。
ハリをゴミとして処分する場合は、自治体によって指示がまちまちです。自分の住む地域のものを必ず確認しましょう

●釣りバリの捨て方・具体例

東京都杉並区:不燃ゴミ。ケースまたは厚手の紙などで包み「危険」と表示する
広島県広島市:不燃ゴミ。新聞紙などに包んで、丈夫なポリ袋に入れて「危険」と書いて出す
大阪府牧方市:粗ゴミ。危険のないようにする

実際に刺さってしまった場合は?

どんなに気をつけていても、何かに引っ掛かってしまうのは仕方ありません。引っ掛かった場合の対処法を頭に入れておき、落ち着いて対応すれば被害は最小限に抑えられます。 まず、大前提としてペンチやプライヤーなど、必ず道具を使って対処するようにしましょう。横着して素手で外そうとすると、二次災害に繋がりやすいです。

カエシまで刺さっていない場合は、比較的簡単に外れてくれます。ハリの軸を持って、ゆっくりと逆方向に引っ張りましょう
※写真は例としてスポンジに刺して撮影しています

カエシまで刺さってしまっている場合は、次の3つの方法があります

ひとつは、1度完全に刺しきってしまい、カエシを完全に露出させ、ペンチなどでカエシを潰してから抜く方法です

もうひとつは、カエシから先端にかけてをニッパーでカットして抜く方法です

穴が開いてもいい衣服であれば、その部分を丸ごとカットするのも手です。

万が一、皮膚に刺さってしまった場合は……?

衣服に刺さることもあれば、当然、人間の皮膚に刺さることもあります。
カエシの手前であれば、衣服同様簡単に抜けてくれますが、カエシまで刺さっている場合は、その場で病院に行きましょう。無理に抜こうとすると傷口が広がってしまいます。釣り場近くの病院であれば、同様のトラブルへの経験があるお医者さんがいる可能性が高いです。
なお、病院に行くときは、当然ハリがついたままになるわけですから、できるだけぶらぶらしないようにするなど、二次災害を防ぐための最大限の措置をしておきましょう。

病院が近くにないなど、やむを得ず自分で対応するしかない場合は衣服などと同じで、1度カエシまで刺しきってからカエシを潰し、そこから先端をカットして抜きます。人間の肌は、思った以上に抜けにくいので、最大限抜けやすくしてからにしましょう。
また、上手くハリが抜けても、その日はそのまま釣りを続行するのでなく、病院に行って消毒などの治療を受けましょう。

冒頭の繰り返しになりますが、ハリは「刺さりやすく、抜けにくく」できています。つまり、身の回りのあらゆるものに引っ掛かる可能性があるわけです。なので、まずはトラブルが起きにくいように収納方法を工夫したり、現場でていねいに扱うことを心がけましょう。引っ掛かってしまった場合も、二次災害を防ぐために落ち着いて対応すれば大事には至りません。動画でも詳しく解説していますので、ぜひご覧ください。