釣りのトラブルシューティング&準備

トラブルシューティング

No. 06

【ライフジャケット編】

この連載は「釣りのトラブルシューティング&準備」がテーマ。
今回は「ライフジャケット」について説明します。
釣りは水辺でのレジャーゆえに、落水という危険とは常に隣り合わせです。
ライフジャケットを着用することの重要性や種類、そして正しい着用方法からメンテナンスなど、必ず知っておくべきことを紹介していきます。

なぜ、ライフジャケットを着用しないといけない?

ライフジャケットは救命胴衣とも呼ばれ、文字どおり自分の命を救うために着用するものです。いざ落水してしまったときに、身体と顔を浮かんだ状態にしてくれる浮き輪の役割をしてくれます。落水時に自分で泳げればいいですが、浮かんでいれば救助を待つことができます。なお、落水時の生存時間は、水温10℃以下だと1~3時間以内と言われています。実際には波を被ることもあるでしょうし、パニック状態に陥ったらもっと短いかもしれません。少しでも長く身体を浮かせておくことが、助かるために必要なことです。

安全なライフジャケットはどう選べばよい?

ライフジャケットには国土交通省が定めた安全基準があります。2018年から、小型船舶への乗船時にはライフジャケットの着用が義務化され、乗船者が着用を怠った場合は船長が行政処分を受けるという法律が施行されています。

安全基準を満たしたライフジャケットには通称「桜マーク」と呼ばれる合格印がついています。

なお、桜マークがついたライフジャケットにも、乗船する船舶によって「TYPE-A」、「TYPE-D」、「TYPE-F」、「TYPE-G」の4種類があります。
すべての小型船舶で使用可能なのは「TYPE-A」です。釣りを楽しむ船(遊漁船)に乗る場合は、TYPE-Aを着ていれば問題ありませんので、まずはこちらを購入するのがよいでしょう。このタイプは浮力体がオレンジやイエローなどの目立つ色で反射板と笛が装備されています。

ライフジャケットの種類

ライフジャケットには、大きく分けて「固型式」「自動膨張式」の2種類があります。釣りのシチュエーションによって適したものがあるので、自分にどんなものが合うのか、特徴をおさえておきましょう。

こちらは固型式ジャケットです。ポケットの内側に硬いスポンジのような浮力体が入っていて、水に浮くようになっています。

子ども用の固型式ジャケットです。お子様の安全を確保するためにも、着用を習慣づけるようにしましょう。

これはどちらも自動膨張式ジャケットです。水に落ちたとき、自動的に中の気室に空気が送り込まれ、浮き輪のように膨らんでくれるものです。

固型式のメリットは、万が一落水したときに、岩などにぶつかっても浮力体が身体を衝撃から守ってくれるという点です。磯釣りではこちらが選ばれることが多いです。

固型式にもタイプがあります。左が磯釣り用で、右がルアーフィッシング用のベストです。磯釣り用はウキやオモリなどの小物の収納もできるようなポケット配置になっています。ルアー用は、大きめのルアーケースが入るように、ポケットも少し大きめになっています。

加えて、股紐がついているので、流れにもまれてジャケットが脱げてしまわないようにもなっています。前のチャックも必ず閉めるようにしましょう。

股紐、前のチャックを閉めないでプールに飛び込んだ実験です。落水と同時に浮力で身体から脱げてしまっています。これではまったく意味がありません。必ず股紐を通し、チャックを閉めて着用しましょう。

自動膨張式には肩掛けタイプと腰巻きタイプの2種類があります。こちらが肩掛けタイプです。

こちらが腰巻タイプ。

外観は違いますが、肩掛け、腰巻きどちらも膨らむ仕組みは同じで、内部構造はこのようになっています。

自動膨張式の内部。カバーに覆われたカートリッジに水が進入して水を感知するとボンベに穴が開き、ガスが放出されて中の気室が膨らむ仕組みになっています。

肩掛けタイプは、落水したときに、首の周りに浮き輪ができるようになっています。堤防や船釣り、湖の釣りなど、落水しても岩などにぶつかる心配のない場面で着用されることが多いです。

気室が前にくるように着用し、できるだけ身体に密着するようにベルトをしっかり締めましょう。緩すぎると、気室が膨らんだときに首から脱げてしまいます。

腰巻きタイプです。こちらは落水したとき、両脇の下に浮き輪ができるようになっています。肩回りがなにもないので、サオを振りかぶって投げる動作の多い釣りに向いています。また、冬場に重ね着がしやすいというのもメリットです。

腰巻きタイプの着用時は、肩掛けと違って締めすぎないことがポイントです。なぜなら、膨らんだときに脇の下までずり上がってこない可能性があるからです。緩すぎず、締めすぎずといった具合に調整しましょう。

なお、落水しても万が一膨らまなかったときのために、ここを引っ張れば強制的に膨らませることもできます。

腰巻きタイプにも手動膨張用の紐がついています。

これは上下逆に着用してしまっている例です。これでも恐らく膨らまないことはありませんが……ホールド感に劣りますし、手動膨張用の紐が引っ張りにくかったりするので正しく着用しましょう。

肩にたすき掛けするのもNGです。膨らんだときに浮き輪の役割を果たさなくなってしまうので、まったく意味がありません。

上着の下に着用するのもやめましょう。落水時に上着が広がって、さらに身動きが取りづらい状況になってしまいます。

固型式、自動膨張式問わず、だいたいのライフジャケットにはホイッスルがついています。落水して身体は浮いていても、声を出すと一気に体力が奪われていきます。周りに人がいないときなど助けを呼ぶための必需品です。

自動膨張式の注意点

ここからは自動膨張式を使用する場合、正しく作動するように注意すべき点があるので紹介していきます。

1度作動したカートリッジは緑のラインが赤に変わります。外側から見えるように窓がついているものもありますが、中を開けないと見えないものもありますので、釣りに行く前は必ずチェックするようにしましょう。

なお、カートリッジには有効期限があります。だいたい製造してから3年くらいに設定されていることが多いです。

稀に、雨に濡れた日に着用していると誤作動でいきなり膨らんでしまうケースもあります。また、雨のあとしっかり乾かさないで保管していると、勝手に膨らんでしまうこともあります。有効期限はあくまでも目安で、期限の前でも気になったら交換するのがよいでしょう。

カートリッジの交換方法は気室に書いてあります。メーカーにもよりますが、交換キットはだいたい本体の半分以下の値段で購入できるので、常に予備を持っておくようにしましょう。

外側のカバーはマジックテープで閉まっています。中のカートリッジや気室が取り外せるようになっているので、カバーは洗濯することもできます。

気室の収納方法などは内部に説明が書いてあるので、1度出したら正しく収納するようにしましょう。

収納するときに気をつけるのは、手動膨張用の紐を正しく収納することです。

たとえばこのように紐が途中からはみ出してしまっていたりすると、釣りバリに刺さったり、岩などに引っ掛かってしまうなどのトラブルが起こりやすくなります。

また、内部にしまい込んでしまうと、手動で引っ張って膨らませることができなくなってしまいます。

ボンベが錆びていないか、またしっかり締まっているかも確認しましょう。

膨らみが足りないときのために、口で膨らませる管もついています。逆に、1度膨らんだ気室をもとに戻すときも、この管から空気を抜いて、もとのように折りたたむことができます。

■また、横浜の釣りフェスティバルやフィッシングショー大阪の会場では主催者がブースを用意しライフジャケットの無料点検を行っています。穴の有無なども見てもらえます。ご活用ください!2025年は釣りフェスティバルが1月17~19日、フィッシングショー大阪が2月1・2日に開催されます。

以上がライフジャケットについての説明になります。自分の生死に関わるとても重要な道具なので、釣りザオやリールなどと同じように、釣りの必需品として自分に合ったものを必ず用意するようにしましょう。動画でも詳しく説明しているので、ぜひご覧ください。