釣りはじめていいですか?

釣りの種類ってどのくらいあるの?

その 1

釣りの種類ってどのくらいあるの?

ねらう魚も、釣り方も、場所も数多くあるのが釣りの世界です。
釣りってどうやってはじめるのか、毎回5分で学んでいきましょう。
生徒は「釣り堀めぐり」をしている河﨑莉奈さんと、駒澤清華さんです。


右:河﨑莉奈(かわさき・りな)さん。左:駒澤清華(こまざわ・きよか)さん。
中:釣りの先生役=八木健介さん(月刊つり人編集長)

河﨑莉奈(かわさき・りな)

1996年5月24日生まれ。岡山県出身
小学生のときにおじいちゃんと瀬戸内海の島に釣りに行ったことがある。「釣り堀めぐり」のコーナーに出演して、都内と東京近郊の釣り堀をめぐるなかで、コイ、ホンモロコ、テナガエビ、ニジマス、キンギョを釣った。多摩川の釣りイベントでハゼを釣った。

駒澤清華(こまざわ・きよか)

1997年5月20日生まれ。北海道出身
お父さんが釣り好きで、小学生のときは毎年家族で石狩湾に行っていた。「釣り堀めぐり」で、コイ、ホンモロコ、テナガエビ、ニジマス、キンギョ、モツゴを釣った。多摩川の釣りイベントではハゼを釣った。

釣りの種類

── ふたりは「釣り堀めぐり」に出ているけど、それ以前に釣りをしたことがありますか?

駒澤実家が札幌で、お父さんが釣りをするので子どものころ家族で海に行ってました。

河﨑私は実家が岡山で、おじいちゃんが海釣りをする人で、小学生のときに一緒に行ってボラという魚を釣ったことがあります。

── 釣りって何種類くらいあると思う?

駒澤10種類くらいはあるんじゃないかなと思ってました。

河﨑釣りが何種類あるか、考えたことないです、100種類くらい?(笑)

── ねらう魚、釣りをする場所、釣り方の組み合わせを細かく分けると、100以上あります。釣りの種類はかなり多くなります。たとえば、釣具店、とくに大型店に行くと、店内の棚がねらう魚や、釣り方のジャンルや道具ごとにまとめられいるので、わかりやすいと思います。店員さんも質問すればやさしく教えてくれるはずです。ここでは、おおまかに分けると、どんな釣りがあるのか説明します。

釣りのジャンルは、ねらう魚、釣りをする場所、釣り方などによって、細かく分かれている。雑誌を表紙を見ても、釣りのジャンルが多いことがわかります

なにが釣れる? なにを釣りたい?

 釣りの対象になる魚の種類は数多くあります。魚だけでなく、イカやタコなどの軟体動物、ザリガニやテナガエビなどの甲殻類も釣りの対象になります。
 なるべく身近な魚で、釣りの対象魚になっているものを紹介します。食べたことのある魚、見たことのある魚はいますか?
聞き慣れない名前もあるかもしれません。

●海の釣り
(1)魚類
アイナメ、マアジ、イサキ、イシモチ、イワシ、カサゴ、カマス、カレイ、カワハギ、クロダイ、シロギス、マゴチ、サバ、サヨリ、スズキ、マダイ、タチウオ、ハゼ、ヒラメ、メジナ、メバル
(2)軟体動物
アオリイカ、ケンサキイカ、スミイカ(コウイカ)、モンゴウイカ、イイダコ、マダコ

初心者からベテランまで楽しめるアジ釣り

ハゼも釣りやすい魚です

軟体動物も釣りの対象です。イイダコはラッキョウをつけた仕掛けで釣ります

●淡水の釣り
(1)魚類
アユ、イワナ、ウグイ、ウナギ、オイカワ、コイ、タナゴ、サクラマス、サツキマス、ニジマス、バス、ヒメマス、ビワマス、ブルーギル、ヘラブナ、マブナ、モツゴ(クチボソ)、ヤマメ(アマゴ)、ライギョ、ワカサギ
(2)甲殻類
ザリガニ、テナガエビ、スジエビ(川エビ)

マブナ(下)とタナゴ(タイリクバラタナゴ)。平野部の湖沼や小川、水路に生息している

ワカサギ。氷に穴を空けて釣る「穴釣り」のイメージが強いけれど、茨城県霞ヶ浦や各地のダム湖など凍らない湖で釣れます

テナガエビ。川や沼、湖に生息。梅雨のころ産卵するために岸の浅場に集まり釣りやすい

 細かく分けていくと、もっと多くの魚がいます。まずは、近くの海や川や池、釣り堀に行って、そこにいる魚で釣りをはじめてみるのも楽しいと思います。淡水だとフナやコイ、海ではアジやハゼなどが釣りやすいです。

海水と淡水
場所によるジャンル分け

 まず、釣りをする場所が、海水か淡水かでふたつに分かれます。それぞれに、場所のタイプによって細かく分かれています。場所がちがえば生息している魚も違います。

◆海釣り
 海でする釣りを広い意味で海釣りと呼びます。釣りをする場所は、防波堤や岸壁、磯(岩場)、砂浜、海釣り施設などがあります。船に乗る釣りは、船釣りや沖釣りと呼ばれます。

●防波堤
 海釣りのなかでもポピュラーなのが防波堤です。港を波から守るための建造物で足場がよく、魚がつきやすく、潮の干満による海の流れがよい場所です。防波堤や岸壁は立入禁止の場所も多く、そうした場所では釣りはできません。
魚=アジ、イワシ、クロダイ、アオリイカなど

●磯釣り
 岩場(磯)が続く海岸でする釣り。足場が悪く、滑りやすい場所もあるので、滑らない靴などが必要。足場が低くて波をかぶる場所もあるので、潮の干満による水位の変化にも気をつけます。
魚=クロダイ、メジナ、メバル、アジなど

乗り合い船

●船釣り(沖釣り)
 船に乗って沖に出てする釣り。船に10~20人ほどの釣り客が乗り、船長の操縦で魚がいる場所に行って釣りができます。釣る魚や季節によっていろいろな「乗り合い船」があります。
魚=数多くの魚種の釣り船があります。アジ、カワハギ、マダイなどが人気です

●海釣り施設
 釣り用に整備された防波堤や桟橋が日本各地にあります。施設や駐車場が有料の場所もあり、利用のルールが設定されています。
魚=場所によっている魚がちがうので。施設のウェブサイトで調べてみましょう

●レンタルボート
 浜や川の河口で手こぎボート、小型エンジンつきのボートをレンタルして、沖に出て釣りができます。
魚=シロギス、ハゼなど

●海上釣り堀
 港の近くに浮かべたイケスにアジやマダイなどの魚を入れて、それを釣る釣り堀です。

●イカダ釣り
 漁港近くの沖に浮かべたイカダに乗ってする釣り(有料)。渡し船で港とイカダを行き来します。施設の数は多くありませんが、こういう種類の釣り場もあるという豆知識です。

◆淡水の釣り
 淡水の釣りは川、湖、ダム湖、池、水路、小川などに分かれます。海に注ぐ川の下流域から河口にかけては、淡水と海水が混じり合い、汽水域と呼ばれる。汽水域に生息したり、海と川を行き来する魚もいます。

●川
 一般的に川の上流は川幅がせまく、流れが速いです。下流に行くにしたがって川幅が広くなり、流れがゆっくりになります。上流から下流まで、環境に合わせて、さまざまな魚が生息しています。
・上流
 山地の渓谷を流れる川は川幅がせまく、岩が多く、流れが速いです。水はクリア。いちばん上流(源流)にいるのはイワナです。少し下流の渓流にはヤマメやアマゴなどがいます。こうした場所の釣りを「渓流釣り」と言います。

 さらに下ると岩より石底が多くなり、ウグイやオイカワがいます。流れる川を仕切った有料のニジマス釣り場などもあります。

・中流
 上流よりも川幅が広くなります。流れの速さは川によりますが、上流よりは遅くなります。オイカワ、ウグイ、コイなどがいます。石にコケがつく川には夏はアユがいます。

・下流~河口
 川幅は広く、流れがゆるやかです。都市部を流れる川は水の透明度が低くなります。コイ、ウナギ、ウグイ、バス、テナガエビなどがいます。河口近くの汽水域には、下流にいる魚のほかに海と行き来するハゼやスズキ、ボラもいます。一部の大きな川の下流やそこにつながる湖には、ソウギョやアオウオといった全長1mを越える大きな魚がいます。

東京都江戸川区の江戸川で釣ったソウギョ

神奈川県芦ノ湖

●湖や沼
 日本中に湖や沼があります。琵琶湖(滋賀県)や霞ヶ浦水系(茨城県)のような大きな湖が有名です。標高が高い場所にある、桧原湖(福島県)、中禅寺湖(栃木県)、芦ノ湖(神奈川県)、富士五湖(山梨県)、野尻湖(長野県)などは山上湖と呼ばれます。
・山上湖
 山の近くある湖で水は冷たくクリアです。ニジマス、ヒメマス、ワカサギ、コイ、ウグイ、バス、ヘラブナなどがいます。場所によっている魚は違います。

山上湖はレンタルボート店があることが多い。ヘラブナ、ワカサギ、バスなどを釣る人がボートを利用します

・平野の湖や沼
 マブナ、ヘラブナ、コイ、ワカサギ、バス、ライギョ、テナガエビ、モツゴなどがいます。湖や沼の周りの小川や水路には、タナゴ、マブナ、モツゴなどがいます。

●ダム湖
 日本中の川には農業用水や工業用水などさまざまな目的でダムが建造されています。ダムによって造られた湖がダム湖です。岸釣りやレンタルボートでの釣りができるダム湖もあれば、釣りが禁止のダム湖もあります。
 ダムが川の上流から下流のどの位置にあるかによって、いる魚がちがいます。また、ダム湖によって魚を放流しているところもあります。コイ、ヘラブナ、バス、ウグイなどがいます。ワカサギ、ニジマスなどが放流されているダム湖もあります。

ダムで川の水をためてできたのがダム湖

レンタルボート店があるダム湖

●管理釣り場(釣り堀)
 釣り用の池にヘラブナやニジマス、キンギョが放流されていて、有料で釣りができます。屋外プールを、秋から春の間は釣り堀にしている場所もあります。

キンギョの釣り堀

屋外プールを活用した釣り堀もあります。ニジマスが釣れました

ひとつの魚に多くの釣り方
釣り方によるジャンル分け

魚種と場所のタイプが数多くあることを見てきました。さらに、釣りにはいろいろな釣り方があります。基本は、釣りバリにエサをつけて、それを魚がいる場所に入れて食わせる釣り方です。大きなくくりとして「エサ釣り」と呼ばれています。

●エサ釣り
 エサ釣りのなかにも、釣り方によって多くのジャンルがあります。名前だけ挙げると、ウキ釣り、ミャク釣り、投げ釣り、コマセ釣り、泳がせ釣り、ヘチ釣りなどがあります。ウキ釣りのなかにも細かいジャンルがあるので、釣りの全体的なイメージは家系図のように、枝分かれしています。

泳がせ釣り。生きたイワシを泳がせて釣ったマゴチ

●ルアー釣り
 エサを使わず、小魚などに似せたルアーを使う釣り方もあります。ルアー釣りのなかにも、ねらう魚によって数多くのジャンルがあります。
 ルアー釣りの対象魚は、海はスズキ、アジ、アオリイカ、メバルなどが人気です。淡水はバス、ライギョ、ニジマスなどがあります。ひとつの魚種をねらうルアーにも数多くのバリエーションがあります。

リールザオでルアーを投げて引いてニジマスを釣る

●毛バリ釣り(フライフィッシング)
 魚が食べている小さな虫に似せた毛バリ(フライ)で釣る釣り方もあります。毛バリ釣り(フライフィッシング)も、ねらう魚によって、数多くのジャンルに分かれています。川では、イワナ、ヤマメ、アマゴ、ニジマス、ブラウントラウトなどが人気です。オイカワ、ブルーギル、バスなども釣れます。海ではスズキ、シイラ、ボラ、カツオなどが対象魚になります。フライやルアーのジャンルは細かく分けると無限の世界が広がっているように感じるほどです。

●アユの友釣り
 エサでもルアーでもなく、生きたアユをオトリにする釣り方。アユは川底の石についたコケを食べ、なわばりをもちます。侵入してきたほかのアユに体当たりして追い出す習性を利用して、オトリを泳がせてなわばりに入れて、体当たりしてきたアユをハリに掛けて釣る方法です。

 ねらう魚種、釣りをする場所、釣り方という3つの要素で釣りのジャンル分けを見てきました。3つの要素を組み合わせるので、ひとつの魚種を釣るのにも、いくつもの釣りのバリエーションができるのです。例としてアジ釣りを見てみます。

●アジ釣り
 (1)場所は防波堤や磯や海釣り施設。釣り方はウキ釣り、真下を探るカゴサビキ釣り、投げるカゴサビキ釣り、ルアー釣り(アジング)などがある。
 カゴサビキ釣りは、オモリとハリとカゴがついた仕掛けを使い、カゴにイワシのミンチなどの寄せエサを入れます。水中でカゴを振ると、寄せエサが広がってアジを寄せ集めます。集まってきたアジが、飾りがついたハリを食べて釣れるという仕組みです。

防波堤でアジをカコサビキ仕掛けで釣る

カゴ(ケース)に寄せエサを入れる

サビキ仕掛けのハリ。エサに見えるように装飾したハリをアジが食べます

近年人気の釣り方が、アジ用の小さなルアーを使ったアジングという釣り方

アジング用のルアー。長さ3cmくらい

(2)場所は船の上(船釣り)。釣り方はカゴサビキ釣り。
マアジ釣りだけでも場所や釣り方に多くのバリエーションがあることがわかります。このように、どの魚にも釣りのバリエーションがあるのです。

釣りは一生の趣味

── ここで解説したことは、釣りの一部です。どんな釣りをやってみたい?

駒澤イカ釣りめっちゃやってみたいんですよ。美味しいから大好き(笑)。

── イカ釣りにも釣り方が何種類かあります。人気があるのはエギ(餌木)というルアーを使ってアオリイカを釣る釣り方で「エギング」と呼ばれています。エギを水中で泳がせるとアオリイカがエサだと思って抱きついて食べます。エギングは防波堤や船釣りで楽しめる釣りです。

アオリイカ釣りで使うエギ

エギにヒットしたアオリイカ。

河﨑すべての釣りをやってみようと思ったら何年くらいかかりそうですか?

── たぶん一生かけても無理です。何回か生まれ変わらないと(笑)。逆に言えば、一生かけて楽しめる趣味が釣りだと思います。釣りたい魚、場所、釣り方のほかに、季節や時間帯をかけ合わせると無限とも言える組み合わせがあります。ひとつの魚のひとつの釣り方でも奥が深いので、1種類の釣りを40年、50年楽しんでいる人もたくさんいます。
釣りはハードルが高い趣味ではないんですよ。釣りやすい魚からはじめてみると、それほど難しいものではありません。ふたりは東京に住んでいるので、ハゼ、テナガエビ、マアジ、マブナなど身近な釣りからはじめてみるのがオススメです。釣りに慣れたらアオリイカ釣りもできると思いますよ。