釣りのトラブルシューティング&準備

準備

No. 02

【フィールド別 釣りの準備~渓流編~】

この連載は釣りの準備がテーマ。
準備といっても、釣り方や釣り場によって

用意するものは様々です。何を持っていけばいいんだろう?
という準備の疑問を解決。必需品からお助けアイテムまで、あなたの釣りをサポートします。
今回のテーマは「渓流釣り」です。
大自然のなかで楽しむ非現実感は格別! 景色だけでなく、釣れる魚もとっても綺麗ですよ!
それではいってみましょう!

渓流釣りに行ってみよう

渓流釣りを楽しむために準備するものリスト

服・小物

    ●各釣り共通

  • ウェーダー
  • ウェーディングシューズ
  • ゲーター
  • 速乾性タイツ
  • 速乾性ショートパンツ
  • ネオプレーン製靴下
  • レインジャケット
  • 帽子
  • 偏光サングラス
  • 救急セット
  • 虫除けスプレー
  • クマ撃退スプレー
  • クマ除けの鈴
  • リュック
  • ベスト
  • 腕時計
  • 地形図

釣具

    ●テンカラ釣り

  • テンカラ用サオ
  • テンカラ用ライン
  • テンカラ用毛バリ
    ※ロッドとソールはベイトでもOK
  • ●ルアー釣り

  • スピニングロッド
  • スピニングリール
  • リーダー
  • スナップ
  • ルアー
  • ●各釣り共通

  • ラインカッター(ハサミ)
  • イトくず入れ
  • フォーセップ
  • ランディングネット

渓流で釣れる魚たち

早速、渓流ではどんな魚が釣れるのか見ていきましょう。

イワナです。冷たい水を好むため、渓流のなかでももっとも上流部に生息しています。全体的に細長く、茶色っぽい背中に白い斑点がついているのが特徴です。国内では、北海道から和歌山県まで生息が確認されています。イワナの仲間は海外にも分布していますが、日本はその南限とされています。

これはヤマメです。イワナに比べると幅広で、白っぽい身体に楕円形の斑点があります。こちらは北海道から本州、九州まで分布しています。

アマゴです。ヤマメに似ていますが、小さな赤い点があるのがわかるでしょうか。おもに中部地方、四国、九州に分布しています。ざっくりと「東日本=ヤマメ、西日本=アマゴ」という認識で、かつての研究ではヤマメとアマゴの境界となる川があるとされていましたが、近年は見直されてきています。

ニジマスです。北米原産の魚で、日本で釣れるのは放流された魚たちです。釣り堀や管理釣り場でもよく見られる、ゲームフィッシングに人気の魚です。すべての魚に共通しているのが、もともとは海に下って身体を大きくして、川に戻ってきて産卵をする、降海型の魚であるということです。サケと同じような生活史を持つ魚たちなのです。

しかし、日本の場合土砂崩れやダム・堰堤の工事など、さまざまな理由から地形が変動して海と遮断された環境になり、川で一生を終える魚がほとんどです。

どの魚も30cmを超えると「尺」と言って、渓流釣りでは大物の部類になります。ちなみにこれは白点がまったくありませんがイワナです。同じイワナでも、DNAが違うとまったく違う模様になることがあると、近年の研究で明らかになってきました。川や住んでいる環境によって見た目の違いがあるのも、渓流魚たちの面白いところです。

渓流ってどんなところ?

渓流とは、川の上流域のことです。先ほど紹介した魚たちは冷たくて綺麗な水を好むので、基本的には川の上流域に生息しています。

民家や畑、田んぼのあいだを縫って流れるエリアです。「里川」と呼ばれたりします。このあたりから、ヤマメやアマゴが生息するようになります。
里川は春先がねらいめです。夏になると草が生い茂って釣りがしづらくなります。また水温も上がってくるので、魚たちは涼を求めて上流に行ったり、数少ない日影や冷たい水の流れ込む場所にいることが多いです。

民家や畑などを抜けてさらに上流に上っていくと、高低差が出てきて本格的な渓流の雰囲気になります。両岸の木々が頭上に生い茂り、涼しげな風が川を下りていきます。

魚たちはどんな場所に潜んでいることが多いのでしょうか。代表的なスポットを見ていきましょう。
これは瀬です。底石が点在する比較的浅い流れのことを指します。ヤマメはこうした速い流れのなかを好むことが多いです。

トロ場。写真のような深く緩い流れです。川底に見える大きな石の上流側は、さらに流れが緩くなっているので魚たちの着き場所になっています。

滝、落ち込みの下にできる深場。魚たちがこれ以上遡上できないので、白泡の下や両サイドに魚が溜まっていることがあります。

川の源流域です。大きな岩が多く、高低差が激しいですね。神秘的な雰囲気のなか、魚との出会いを楽しむ時間はまさに非現実的です。

道具は「すべて持ち歩く」が基本!

渓流釣りは、1カ所にとどまる釣りではなく、川を下流から上流に上って、移動しながら釣っていくのが基本です。時には川の中に入ることもあります。安全のため、装備を万全にしておくことは渓流釣りにおける最重要事項と言ってもよいでしょう。

上流へと川を上っていくとき、どうしても水の中に入らなければいけない場面があります。そのため、ウェーダーと呼ばれる防水生地のウェアを着用するのが基本です。
ウェーダーには大きく分けて2種類あります。ひとつは靴と一体になったタイプのもの。もうひとつは、別にシューズを履いて着用するソックス型があります。
シューズ一体型は比較的価格も安く、着脱しやすいことがメリットです。
写真はソックス型。こちらは着脱に少し手間がかかりますが、普通の靴を履いているのに近い感覚で着用できるので、とても歩きやすいです。

これがウェーダーです。

上半身は気温に合わせた服装にしましょう。ただし、渓流を上り下りすると春先でも意外と暑くなってきます。温度調節ができるように工夫するとよいでしょう。

もうひとつ、夏場におすすめなのはウェットウェーディングスタイルです。こちらは濡れることを前提としたスタイルで、ひんやりとした水を感じながら快適に釣りができます。

ウェットウェーディング(濡れながら釣りをするスタイルのこと)では、下半身に速乾性タイツ、ショートパンツを履き、スネにはケガ防止のためのゲーターを装着します。足はネオプレーン製の靴下にウェーディングシューズを着用します。

ネオプレーン製の靴下

ケガ防止のためのゲータをつけているようす。

ゲーターにはソックスと一体になったタイプのものもあります。この場合はこの上からシューズを履けばOKです。

ウェーディングシューズは防水ではなく水捌けがよいつくりになっています。底はフェルトソール、ゴム素材のラジアルソールなどがあります。

写真はフェルトソール。フェルトとは動物の毛を圧縮してシート状にしたものです。底石のヌメリに強く、滑りづらいのが特徴。一方溝が入ったゴム製のラジアルソールは乾いた岩場で強いグリップ力を発揮します。長時間の山歩きがある場合などに向いています。

夏場は半袖でも大丈夫ですが、ハチやアブ、ブヨなどに刺される場合もあるので長袖を着たほうが無難でしょう。

クマ除けグッズは必需品です。専用の鈴はかなり高い音が出るので、山を歩いているときは遠くまで響くようになっています。
本州で出会うクマ(ツキノワグマ)は、臆病な性格をしていて「人間を襲って食べてやろう」とは思っていません。不意に鉢合わせたときに、クマも最終手段として襲うという選択をしているにすぎないのです。なので、出会わないように最大限できることをやっておくことが大事です。鈴に限らず、常に音を鳴らして「ほかの生きものがいる」とクマに知らせることは、かなり有効な対策です。
万が一遭遇した場合、追いかけられたらクマの脚力には適わないので、絶対に背中を向けて逃げてはいけません。できるだけ視線を離さず、こちらの身体を大きく見せる(両手を上げる、釣りザオを高く掲げるなど)と、クマのほうから逃げていく場合がほとんどです。

なお、鈴は街中で鳴らすとうるさいので、使わないときはミュート(消音)できるようになっています。

持っていると安心なのが、クマ撃退スプレーです。クマが嫌がる唐辛子成分を含んだスプレーで、至近距離で噴射すると高確率でクマが去っていきます。誤射して自分に降りかかると大変なことになりますので、要注意!

虫よけスプレーもあると便利です。袖口や帽子の裏に数プッシュすればOKです。

ほかにも、救急セットがあるとよいです。車から離れた山奥でケガをすると、程度に関わらず命に関わる危険性があります。最低限のものがコンパクトになった救急セットが市販されているので、まずはこれがあるとよいでしょう。

なかでも絆創膏や、上段左から3番目のポイズンリムーバーなどはあったほうがよいでしょう。毒液や毒針を吸引するアイテムです。スズメバチなどに刺されたとき、ポイズンリムーバーで応急処置ができると被害も最小限に抑えられます。

釣り道具の準備

釣り道具もコンパクトに、かさばらないように持ち運ぶのがコツです。今回は、道具が少なくて済むテンカラ、ルアー釣りを例に説明していきます。

テンカラは、渓流魚が普段食べている虫に似せた毛バリを使ってねらう、日本古来からある釣り方です。道具の少なさや機動性などから人気です。リールを用いない、長さ3~4mほどの延べザオで行ないます。

サオは穂先から仕舞っていくと長さ50cmほどまで短くなります。

とても軽い毛バリを飛ばすために、イトの重みを利用して投げるのがテンカラの特徴です。
イトはビニールのような素材でできています。

毛バリはこんな感じ。魚が毛バリに飛びつく様子が見られるのがテンカラの魅力です。

これはトビケラという虫を模した毛バリです。

トビケラの幼虫です。渓流魚が食べる虫は水生昆虫という類の虫で、幼虫は水中の石の裏などに張り付いています。

毛バリを使った釣りは西洋発祥のものもあり、フライフィッシングと呼びます。イトの重みを利用して投げるのはテンカラと同じですが、リールを使うのでイトを長く出して、遠くに飛ばすことができるのが特徴です。

続いてルアー釣りの紹介です。小魚に似せたミノーと呼ばれるものや、金属でできたスプーンというルアーなどを使います。魚たちの好奇心を煽ってルアーを追わせるエキサイティングな釣りです。

小魚っぽいルアーがミノーです。

上から2つがスプーン、下がスピナー。

ルアー釣りで使うサオは、テンカラ用のサオよりも半分くらいの長さです。こちらは5本継ぎで、バラすと35cmほどになります。

水中が見やすくなるので、テンカラ、ルアーどちらも偏光サングラスはあったほうがよいでしょう。太陽光の差し込む角度によっては、水面が反射して見づらいことがあります。

釣り道具の持ち運びにはベストが便利!

移動しながらの釣りということは、釣り場から車まですぐには戻れません。なので、道具はすべて持ち歩くのが基本です。携帯に便利なのはバックパックかベストです。バッカン(防水の四角いケース)は大容量で便利ですが、足場の不安定な渓流を釣り歩くには向きません。ここでは、ベストの活用方法について紹介します。

ベストはポケットがたくさんついているので、立ったまま道具の出し入れがしやすいです。

ルアーや毛バリのケースはポケットと同じくらいのサイズで収納できるものがよいです。

イトをカットするハサミは、このようなリールタイプのものが便利です。カッター部が手もとまで伸びてくれます。ベストの利き手のほうにつけておくといいでしょう。

イトくずを捨てるものは必ず携帯しましょう。ポーチタイプのものは内側にベルクロがついており、イトくずが簡単にくっついてくれます。巻き取り式のものもスピーディーに回収できるので便利です。

掛かった魚を取り込むランディングネット(網のこと)を背中のリングに取り付けることもできます。

磁石で取り付けておくと、魚とのやり取りの最中に引っ張れば外すことができます。「マグネットリリーサー」という名前でアウトドアグッズとして市販されています。強い磁力でくっついていますので、移動中に脱落する心配もありません。

これは掛かったハリを外すフォーセップという道具です。イワナやヤマメは口の小さい魚です。指でハリを外そうとすると魚を傷つけてしまったり、ハリが自分の指に刺さってケガをしてしまいます。

飲み物や食料、救急セットなど、頻繁に出し入れしないものは背中のポケットが便利です。

レインウェアは必需品です。持ち運びできるよう、コンパクトにまとめられるものを選びましょう。

釣り場のルール・マナー

日本の渓流は、各地の漁業協同組合(=漁協)によって管理されている場合がほとんどです。そういった渓流で釣りをする場合は、遊漁料を払わないと釣りができません。
近年、渓流魚の個体数はどんどん少なくなっていると言われています。漁協は状況を改善するために釣り場の整備や、稚魚の放流などを行なっています。遊漁料は、そのための資金になっています。漁協によっては、魚たちが産卵しやすいように、産卵床を作ったりしているところもあります。
また、渓流釣りのシーズンは3~10月くらいに設定されています。冬季(10~2月いっぱい)は魚たちの産卵を守るため、釣りができない禁漁期間になることが多いので注意。漁協によって定められた期間があるので必ず確認しましょう。

遊漁券の販売店は漁協のホームページで確認できます。コンビニで売っていることが多いので、あらかじめ確認しておきましょう。

遊漁券購入の際、釣り場地図や放流実績などの情報が得られることもあります。

遊漁証は見やすい場所につけておきます。

近年はアプリで遊漁券を購入できる「つりチケ」というサービスが開発されました。24時間どこでも遊漁券が買えるだけでなく、漁協の管轄エリアや増水情報なども確認できるのでとっても便利です。

天気予報をよくチェック!

昔から「山の天気は変わりやすい」と言われますが、まさにそのとおりで、急な雨や雷に見舞われることもあります。
とくに雨には注意。あっという間に増水して、撤退できなくなることもあります。鉄砲水や土石流などが起こったら、簡単に流されてしまいます。携帯電話の電波も入らないことが多いので、危険を感じたら引き返す勇気も必要です。
なによりも安全を第一に行動して、渓流での釣りを楽しみましょう!

◆動画でも詳しく解説していますのでご覧ください!
●「釣りあそびジャーナル 道具の準備 渓流編」