アジ釣りはじめます

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磯で「ルアー釣り(アジング)」にチャレンジ
投げて巻いて……コッ!? ルアーならではの魅力を味わおう
尾名浦海岸の磯/めがね岩(千葉県勝浦市)

海で魚釣りをしたことがありますか?
釣りが初めての人でも、挑戦しやすいのがアジ釣りです。
アジは釣って楽しく、刺し身やフライ、塩焼きで食べると美味しい魚です。
気軽にできるアジ釣りにチャレンジしてみませんか。
このコーナーでは、海釣り公園、防波堤、手こぎボートなどで、
毎回変わるいろいろな釣り方を紹介していきます。

アジング(アジのルアー釣り)に挑戦する親子を紹介します。
左:関紀彦(せき・のりひこ)さん。右:関心音(せき・しおん)さん。

関さんは埼玉県在住で普段はバス釣りを楽しんでいます。しおんさんは、お父さんと釣りに行き、スピニングタックルでバスを釣ったことがあるそうです。ふたりともアジのルアー釣りは初めてです。ページトップ写真のアジは勝浦の釣具店コスタフィッシングサービスさんが、外房の金アジを味わってもらうべく、関さんへのおみやげとして取材前日に捕獲してくれたものです。お刺身と煮付けにして、おいしくいただきました!

アジングの場所と時間帯

●アジがルアーで釣れるのはなぜ?
 このコーナーでは今まで、オキアミをエサにしたり、寄せエサの煙幕のなかでサビキ仕掛けを踊らせて、アジを釣ってきました。今回はルアー釣りというですが、アジがどうしてルアーで釣れるのでしょうか。
 アジの主なエサは動物プラントンや小さなエビなどの甲殻類、ゴカイなどの多毛類です。ある程度の大きさまで成長すると、イワシの稚魚(シラス)を捕食するようになります。なので、5cmくらいの細長いワームなど、小型のルアーでも釣れるのです。

アジは甲殻類やイワシの稚魚(シラス)なども捕食するのでルアーにも反応します

●アジがルアーで釣れるのは、どういう場所? どういう時間帯?
 このコーナーでは今まで、海上釣り堀、乗合船、海釣り施設、防波堤でアジを釣ってきました。アジのルアー釣りがポピュラーなのは防波堤と、今回のような険しくない磯です。
 アジは群れで行動していて、日中は岸からルアーが届かない沖のやや深い場所にいます。それが、朝方(夜明け前後)と夕方(日没前後)にエサを食べるために群れで岸近くまで回遊します。それを防波堤や磯からルアーを投げてねらうのがアジングです。釣れる時間帯は朝夕に集中するので、その時間を外さないように、現地入りして準備することが大切です。
 群れは岸近くに1~2時間いてくれることもありますが、30分くらいで沖に戻ってしまうこともあります。そもそも岸近くに回遊してこない日もあるので、難しいところです。アジが回遊してくるのは、どの磯、その防波堤なのか、釣り場近くの釣具店で、最新の状況をアドバイスしてもらいましょう。
 夕方釣りをする場合は、日中の明るいうちに釣り場に入って、地形をチェックしておきます。アジが回遊してきそうな、ほかよりも深い溝や、アケアガリの場所を理解しておこう。日の出の時間帯に釣りをする場合は、暗い時間帯に釣り場に入ることになる。その場合は、日中に行ったことがあり、地形を理解している場所を選びます。

釣り場に入る前に、地元の釣具店でアジの近況をアドバイスしてもらおう。写真は勝浦のコスタフィッシングサービスで、夜明け前にアジングのアタリとアワセについて店主の井上さん(右)からレクチャーを受ける関さん(左)

朝マヅメをねらって、千葉県勝浦市の尾名浦海岸の磯に入ります

●アジがルアーで釣れる季節
アジングは1年中楽しめます。なかでも釣りやすいのは春から秋とされています。
また、水がクリアすぎる(プランクトンが少ない)よりは、やや濁っているほうがアジはよく釣れるようです。また、濁りがあると朝夕だけでなく、日中でもチャンスがあります。

アジングの道具

アジング(アジのルアー釣り)は、ラインが極細で、アジが吸い込めるような小さくて軽いルアーを使うことが特徴です。
近年はアジング用として、専用モデルが多数発売されています。ルアーもアジの食性に合わせた専用のものを使います。

●サオ
アジ用の軽いルアー(0.4〜2gのジグヘッド)を投げられる、長さ1.8〜2.1mのアジング用スピニングロッドを使います

●リール
スピニングリールはサイズが1000~2000番を使う。これよりも大きなリールは重さでアジの小さなアタリがわかりにくくなります

●ライン
リールに巻くラインは釣り方によって(1)フロロカーボン3Lb前後、(2)PEライン0.3号前後、(3)PEライン0.5号前後が標準。PEラインを使う場合は、先端にショックリーダーとして擦れに強いフロロカーボン0.8〜1号(3〜4Lb)を結びます

3Lb(0.8号)のフロロカーボンライン

●ルアー(ワーム)
アジング用のルアーでメインになるのはソフトルアー(ワーム)で、長さ5cm前後の細身のタイプが基本。これを小さなアミエビなどの甲殻類や、シラスだと思ってアジが食ってきます。ソフトルアーは、オモリとハリが一体化したジグヘッドに装着して使います

オモリとハリが一体化したジグヘッドにワームを装着
→ジグヘッドリグ
ワームは月下美人アジングビーム(ダイワ)

●ジグヘッド(オモリ+ハリ)
 アジングでは釣り方によって、0.4~2gという軽いものを使います。ジグヘッドは重いほうが投げやすく、軽いほうがアジが吸い込みやすいです。重さはねらう水深、風や潮の流れによって、操作性がよくなる重さを選びます。
 ジグ単の釣りはワームをハリにまっすぐ刺すことが重要。ワームが曲がって付いていると、余計な水流抵抗を受けるため海中での動きが不自然になります。ジグヘッドを指で固定し、ワームのほうを動かしながらハリにセットするとまっすぐに刺しやすいです。

ジグヘッドのデザインは先が丸いタイプ、尖ったタイプなどがあります。沈むときにより自然に見えるように水平姿勢を保つ工夫がされたジグヘッドもあります

●ワームの付け方

(1)ワームをジグヘッドにそえて、ハリ先を外に出す位置を確認します
(2)ワームの中心にハリ先を入れて、押し込んでいく。(1)で確認していた位置からハリ先を出します
(3)ワームを押し込んでまっすぐにつける。ジグヘッドのオモリにワームの端が密着します

身の周りの装備

●服装
 春と秋は動きやすい服装に、雨風を通さない上着があれば大丈夫。夏は日焼けと熱中症対策をしっかりと。冬は発熱タイプのインナーやフリースを着た上に、風を通しにくい上着を重ね着して防寒しましょう。
 靴は防波堤などで滑りにくくグリップ力が高いタイプを履きましょう。磯で釣りをする場合は、岩場で滑りにくい磯シューズなどを履くのがいいです。スパイクタイプ、フェルト底&スパイク、フェルト底などいくつかのタイプがあります。

●ヘッドライト
 日の出の前後、日没の前後がアジを釣るチャンスなので、ヘッドライトが必要です。額に装着するライトは、両手に荷物を持って歩くときに足もとを強く照らしたり、両手で仕掛けを作ったり、ルアーを交換するときに、手もとを弱く照らせる、明るさを調節できるタイプがオススメです。ただし、直接海面を照らすとアジが警戒して食いがわるくなるので、照らす方向に気をつけましょう。

●ライフジャケット
 防波堤や磯から海に落ちたときのために、ライフジャケットは必ず着用してください。落水して水に濡れるとガスボンベによって自動的に中の浮力体が膨張するタイプと、自分でガスボンベのヒモを引いて、浮力体を膨張させるタイプがあります。

●クーラーボックス
 釣ったアジを持ち帰るために、クーラーボックスと、保冷剤や氷を用意しましょう。

ジグヘッドリグの基本

アジングでまず覚えたいのがジグヘッド単体の釣り方。通称「ジグ単」。ジグヘッドにワームをセットして、投げて、巻くのが基本。アジが警戒しない自然なアクションで泳がせたり、沈めやすく、リフト&フォールやトゥイッチといった小技も使います。ルアーとサオ先の間にオモリやウキがないので、アタリがダイレクトに手に伝わるのも魅力。アジングの基本にして、奥が深い釣り方です。

●ジグヘッドの仕掛図

ライン=PE0.3号。またはフロロカーボン3Lbにしてリーダーなしでジグヘッドを結ぶのもOK
直結方法=ラインとリーダーの結び方は、FGノットのほかに電車結び+ハーフヒッチ、トリプルサージェンズノットでもOK

●ジグヘッド単体を使ったタックル
ロッド:月下美人アジング611L-S(ダイワ)
リール:セオリー2004(ダイワ)

ジグヘッドの重さは0.4~2gが基本。それより重いと沈むスピードが速すぎてアジが反応しにくいとされます。ジグヘッドはヘッド(オモリ)の形状によって、水中での姿勢や動きや発する波動に違いがあります。
(1)先が尖ったタイプ
水を切りやすく、ロッド操作に機敏に反応してアクションするので動きによるアピール力が高いです
(2)先が丸まったタイプ
尖ったタイプに比べると水の抵抗が大きく、水の波動によるアピール力が高いです

ジグヘッドは先が尖ったタイプ、丸形などいくつかのタイプがあります

ワームは尻尾のデザインでタイプ別に分けられます。
(1)棒状に尖った「ピンテール」
(2)扁平な「フラットテール」
(3)カールした「カーリーテール」
(4)魚の尾ビレのような「シャッドテール」
まずは、基本の「ピンテール」や「フラットテール」を使ってみましょう。カラーは夜明け前、日没後などの暗いときは、透明や半透明のクリアー系が効く。日中は不透明なソリッド系のカラーから始めてみましょう。

アジング用のワームにはさまざまなものがあります

ジグヘッドリグ単体の釣り方

 ジグヘッドリグ単体の釣り方は次のとおり。
(1)キャストして着水したら、ラインをたるませてルアーを真下に沈める。沈めるときに心で秒数を数えるカウントダウンがおすすめ。
(2)ルアーが引きたい水深まで沈んだら、リールのベールを起こしてラインの出を止め、ロッドを立てる。初めは表層から探るので着水して3秒くらいでベールを起こす。
(3)リールでラインをゆっくり巻き取りながら、サオ先をチョンチョンと動かしてルアーをアクションさせて引いてきます

 最初は表層をねらい、浅い層で反応がなければ、着水後5秒、7秒というように、ルアーを引く層を徐々に深くしていき、アジが釣れる深さを探します
 サオを立てて「チョンチョンと動かす」ときの振り幅は15°くらいの小刻みな感じが目安。サオ先を振りながら、ラインを少しずつリールで巻き取ります

表層を泳ぐジグヘッドリグ。何かの稚魚に見えるはかなげな泳ぎ……。反応がなければ、引く層をどんどん下げていきます

●ジグヘッドの釣り方

①キャストしたら、ラインをゆるめたまま、ルアーを真下に沈めます
②着水してから、1、2、3と数えて、たとえば最初は3数えたらルアーを引き始めます
③アタリがなければ、次は着水から5数えてルアーを引き始める。という方法で引く層をだんだん深くしていき、アジが反応する層を探します

ジグヘッド単体はアジングの基本です

フロートリグの基本

遠浅の磯などでアジングをするときに、アジが回遊してくる溝や深場が遠くにある場合は、ルアーを遠投する必要があります。ジグヘッド単体では届かない場合は、フロートリグを使います。フロート(飛ばしウキ)という自重のあるウキを使うことで、ルアーを遠くまで飛ばせるのです

遠浅の磯で、遠投して溝やカケアガリをねらえるのがフロートリグ。根掛かりもほぼゼロでした

●フロートリグの仕掛図

ライン同士の直結方法=FGノットのほか電車結び+ハーフヒッチ、またはトリプルサージェンズノットでもOK
 中間リーダー=メインラインとの直結部分からヨリモドシまでが中間リーダー。フロロカーボン1.5~2号(6~8Lb)を50~100cm
 ヨリモドシの上(フロート側)に小さめのクッションゴムを入れる
 リーダー=フロロカーボン0.8~1号(3~4Lb)を50~150cm結ぶ。アジが表層にいるなら短め。海底の溝の中層や、深い層を引きたいときは長めにする

 リーダーは50~150cmと幅がありますが、長さはアジがいるタナ(泳層)で決めます。水面でライズしている(アジが水面でエサを捕食している)のが見えているような完全な表層パターンの場合は、リーダーは短めでOKです。ちなみにアジのライズは細かい雨粒が落ちているような小さな波紋が見られます。
 逆に、アジがいる層がやや深く、溝の中層や少し深いタナを通したい場合はリーダーを長めにします。
ルアーを引く層の調節には、ジグヘッドの重さも関連します。ルアーを引くスピードを速くしたいときは、重め(0.6から1g)のジグヘッドを使います。
 超スローに引くか、または潮の流れに任せて溝を流すようにドリフトさせるときは、軽め(0.4~0.6g)のジグヘッドを使います。
フロートには、浮くタイプとサスペンドする(超スローに沈む)タイプがあります。遠浅な磯で遠投してねらう場合は浮くタイプを使います。

フロートリグは2.7mのサオを使い遠投しました

フロートリグの一部。中間リーダーに通したフロート(飛ばしウキ)→クッションゴム→ヨリモドシ→リーダー

リーダーの先にジグヘッドを結ぶ。フロートの自重で遠投するので、ジグヘッドは軽くして水平姿勢でスローに沈めることができる

フロートリグを使った釣り方

 今回のような磯でのアジングは遠投が必要なので、フロートリグの出番です。
 磯では明るいうちに海底の地形変化を観察しておきます。地形が変化した部分は流れがヨレて、エサのプランクトンがたまりやすく、小魚も集まります。
 アジはほかよりも深い溝の中や、溝の深場から浅場に上がるカケアガリなどの地形変化に沿って回遊してエサを捕食するので、そうした地形変化を通過するようにルアーを引きます。
 磯でももし外灯が近くにある場合は、明かりで照らされた部分と暗い部分の境目を探ります。アジは群れで回遊する魚なので1尾釣れれば連続ヒットすることが多いです。

海底の地形変化を観察する。黒く見えるのは沈み根(岩)、緑に見える部分が少し深い溝。溝を通ってアジが沖からやってきます

フロートリグを溝に向かって遠投する関さん

水面のフロートを引くとラインが張って、水中のルアーが上昇する。止めるとルアーはカーブフォールする。こうして溝やカケアガリを探ります

●フロートリグの釣り方

フロートリグはウキの重さで遠投して遠くのスポットを探ることができます。フロートリグは、ウキを支点にして、仕掛けを引けばルアーが上昇して、止めるとルアーが沈みます。このリフト&カーブフォールの上下動を繰り返してアジを誘います

 キャストして、着水したあとで、仕掛けを止めておくと、水面に浮いたフロートから、リーダーの長さぶんだけ、ジグヘッドが沈んでいきます。ルアーを引くと、リーダーやルアーが水の抵抗を受けてジグヘッドは上昇します。引くのを止めるとジグヘッドは再び沈んでいきます。
 岩場は海底の起伏が激しく、海藻も多いので、ジグヘッドを底近くまで沈めると根掛かりしやすい。なので、表層や中層など、なるべく浅い層でルアーを操作する。
 ウキとジグヘッドの間のリーダーの長さによって、ジグヘッドが泳ぐ層を調節して、根掛かりしない層を引けることも大きなメリット。遠浅の場所で、遠投ができて浅い層をねらえる便利な仕掛けです。

しおんさんはフロートリグをスローにただ巻き

釣りのサポート役の佐藤さん(月刊つり人編集部)がルアーをチェックすると。ワームの尻尾がかみ切られていた

しおんさん、アナハゼと遭遇。ジグヘッドワームで根回りをねらっていると、高確率で釣れるゲストです

アタリとアワセ

 アタリはリトリーブの最中にコツッという感触が伝わるのが基本。または、張っていたラインが不自然にたるんでテンションが抜ける「抜けアタリ」も多い。
 アジは沈んでいくルアーに反応しやすいので、サオ先でチョンチョンとトゥイッチしてから、ラインを張り気味のままテンションフォール(カーブフォール)させたり、巻いてから止めて、ジグヘッドを上げて下げるアクションが効果的。
 上から釣り人を見たときに、ロッドとラインを真っ直ぐにして、ラインを張り気味に保つと、アタリを感知しやすいです。
 コンッ!というアタリも、抜けアタリも、リールを巻いてサオを立てて、ラインを張るイメージでハリ掛かりさせる。バシッとサオをあおって、大きく合わせる必要はない。
 アジは寄せエサを使ったサビキ釣りのほうが効率的に数が釣れるのですが、アジングはゲーム性が高く、釣りの趣を重視した釣りといえます。アタリを感じて掛ける楽しさを味わえば、ハマること間違いなしです。

アジは吸い込む系のバイトで、口が大きくなく、口の横が蛇腹のような薄皮です。アタリを感知してしっかり上アゴに掛けないと、口の横に掛かりバレやすくなります。アジングをやり込んでいる人は「上アゴに掛けてこそアジング」と言います

インフォメーション

  • 外房の釣りに詳しい釣具店
    コスタフィッシングサービス
    住所 千葉県勝浦市松部1226-8
    営業 朝4時〜夕方6時 木曜定休
    電話 0470-73-7738
    車での行き方 圏央道「市原鶴舞インター」から国道297号で約40分
  • 駐車場、トイレ、洗面所あり
    • アジ釣りの状況、釣り場、釣れる時間帯などを相談してアドバイスをもらうのがオススメ
      • 磯や防波堤の注意事項
        • ライフジャケットを必ず着用しよう
        • 磯は滑りやすいので、底が滑りにくいスパイクタイプや、フェルト底のシューズや長靴を着用しよう。釣具店にフェルト底や、スパイク底のシューズが売っています
        • ゴミは持ち帰る
        • 事故防止のためひとりでは釣行しない

      開放的な景色は磯ならでは。潮だまりにいるカニやイソギンチャクを触るのも、子どもにとっては楽しみのひとつです

      アジの口の構造にも興味津々!

      アジのさばき方

      アジのさばき方

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